子どもたちを導く古文書リーダー心得
まず古文書の定義を押さえておきましょう。
●明治時代以前の文書(もんじょ)を学問的には古文書と言っている。
●差出人が居て、受取人が居る物が古文書である。
この教材では最もシンプルでわかりやすい例として、武家社会の文書行政(もんじょぎょうせい)のスタート時期すなわち鎌倉時代の古文書を中心に選んで使用しています。
鎌倉時代というのは、ご存じのとおり幕府という新しい時代(新しい武士の世の中)ができ、武士たちに対してどういう文書で)命令を出したり物を与えたりしたか、ということが明確な時代です。
その時代の古文書の様式は次の3つです。
子どもたちとともに中世の古文書を扱う際の基礎知識となります。
1.下文(くだしぶみ)
「この土地を与える」など「御恩と奉公」の根幹をなす命令文書。
原則、楷書に近い。永久な権利を保証するので読み間違いがあっては困るため。
2.下知状(げじじょう、げちじょう)
裁判の判決、恒久的な永続性ある決定・命令を伝えるもの。行書まで(行書が交じっている程度)。
3.御教書(みぎょうしょ)
一般のすべての行政命令。結構くずしてあったりするが、草書にはなっていない。
この3つの様式で、当時の武家社会は動かされていたのです。
そして武家だけでなく公家も影響を受け、武家のやり方を急速に真似するようになりました。
庶民においても寺などが武家社会の文書の様式を真似るようになり、その後、明治維新に至るまで700年間も武家におる幕府政治が行えるようになったわけです。
鎌倉時代がスタートになった、シンプルだけど凄くわかりやすい、みんなが理解しやすい文書行政が、一つの大きな役割を果たしていたのです。
古文書には花押(かおう)が必須です。
そして日本は、今でも印鑑(判子)を社会制度の中で義務付けている唯一の国です。
印鑑と花押は日本の文書には不可欠な要件であり、それは徹底した文書社会(もんじょしゃかい)という文化の表れでもあります。
諸外国はサイン社会ですが、花押は本人の実名の一部をもとに作られているというのがルーツであり、サインも同じく名前をデフォルメして造形的に作ったという点で、まったく花押と同じです。
サインは日本では実は古く平安時代から存在しています。
印鑑はもっと古く1500年前から印鑑文化があったと言われています。