カイドクできる?
古文書ってこうやって読む
カイドクの基本 ~武家はしきたりがだいじ~
武家って、武士のことだよ。武家の人って、自分のことが大事なんだな。位(くらい)や身分を間違(まちが)えると、とんでもないことになっちゃう。

時代劇(げき)で、無礼者(ぶれいもの)!!そこになおれ!!って言ったりしてるの見たことないかな?
身分の上下を大切にしたんだよね。古文書にもそれがはっきりわかる部分があるんだよ。

へ~、めんどうなんだね、武家って。

もし間違(まちが)えたら刀で切られちゃうのかな~? こわい~~~。

武家の古文書 あて名の位置で立場が分かる1
鎌倉幕府 御教書 飯野家文書 (飯野文庫)
これは2人の人が差出人(さしだしにん)の古文書。差出人とあて先を見ると身分がわかるよ。

将軍(しょうぐん)様の下文(くだしぶん)以外(いがい)は差出人は、日付(ひづ)けの下に書いてあるんだったよね。

ここでは2人の名前が書いてあるんだけど、日付けのすぐ下に書いてある方が身分が低い人の名前なんだ。
身分が高い方があとから書くんだよ。
書いた人が複数(ふくすう)いる場合にはこれで身分がわかるんだ。

そしてあて先、送った人の名前だけど、一番左にあるよね。
日付けより高いところから書き出してるでしょ?
これは書いた人(差出人)よりも身分の高い人宛(あて)ということなんだ。

自分よりも位(くらい)が上の人宛の場合には、こうしてあなたが上ですよって、見せる。
これを敬意(けいい)を払(はら)うって言うんだ。

武家の古文書 あて名の位置で立場が分かる2
足利義教 島津家1 (島津家文書 東京大学史料編纂所)

こっちの古文書はどうかな?

日付(ひづ)けの下には、、、、あれ? 名前がないよ。
でも花押(かおう)がある。
花押しか書いていないってことはそうとうにえらい人だってことだ。

では、あて名はというと、今度のは日付けよりもずっと下の位置(いち)から下記出してるよね。
これは、差出人(さしだしにん)よりも身分が低い人に対して書いた文書なんだ。

あて名の位置で、差出人から見て身分が高いのか低いのかがわかるんだ。
自分の身分が中心なんだ。

よくある武家の古文書は ご褒美(ほうび)あげるよ!
足利義稙御内書 (島津家文書 東京大学史料編纂所 )
今度は、文書の中身を見てみよう。最初に「太刀一腰」と書いてあるのが見えるよね。どんな意味なんだろう。

武家の古文書を見るとよく出てくるのが「太刀」と「領」。

「太刀」は「たち」と読んで刀のことだよ。
ここに書いてあるのは「太刀一腰」。「たちひとこし」と読むんだ。
刀って腰(こし)に差(さ)すでしょ。だから刀の数え方として「一腰」「二腰」・・・というんだ。
他には刀は振(ふ)り上げたり下げたりするから「一振(ひとふり)」、切ることで切り口ができるから「一口(ひとくち)(いっこう)(ひとふり)」というのもあるよ。

「一ヒ(いちひ)」は短刀(たんとう)の数え方、槍(やり)だと「一槍(ひとやり)」「一筋(ひとすじ)」「一条(いちじょう)」、「一柄(ひとから・ひとへい・いちへい)」は槍や薙刀(なぎなた)。
こんなにたくさん数え方があるんだ。

もう1つの「領(りょう)」という字。
これは領地(領地)つまり土地を表しているんだ。ということはこの字があるとどこかの土地をどうにかしてくれるということ。
だいたいそこには「~國」という文字もあるはずだよ。
これは場所、今でいう県とか地域をさしているんだ。

そして、これらが書かれているものの多くは、ご褒美(ほうび)としてあげるよってことなんだ。

こんな古文書を見つけたら、刀や土地(領地)をご褒美としてキミにあげるぞ、ありがたく受け取れ!というものだなと思っていいよ。
ご褒美であげると書いてあるんだから、身分が高い人から下の者に出した手紙であることも納得(なっとく)できるよね。

このページのまとめ

このページで学んだことのポイントはこれだ!
整理しておくよ。

武家の古文書は武家のしきたりが満載(まんさい)だ。

〇差出人が複数いる場合は、
日付けの下に身分が下の者から名前を書く。
その横に身分が上の者が書く。

〇差出人から見て身分が高い人へあてた文書は、
あて名の書き出し位置は日付けより高いところから書く。

〇差出人から見て身分が低い人へあてた文書は、
あて名の書き出しは低い位置から書く。

〇「太刀」「領」の文字があったら、
ほぼご褒美として「刀」や「領地(土地)」をあげようと書いてある。

武家っていろいろなしきたりがあって、めんどうなことばかりみたいだ。
偉(えら)そうにしてるだけじゃないんだね。

そういうしきたりがあったから、武家社会の時代が長く続いたんじゃないのかしら。

武家には武家のしきたりが、町民には町人のしきたりがあったんだ。

でも古い古文書で見るように町民に文字の読み書きができるようになるのは江戸時代の中ごろになってから。
なので町民の古文書ってそれほど残っていないんだ。
それに町人どうしで、刀や土地をあげるとかしていないしね。

武家は特に身分を気にする社会組織(そしき)。
今の会社みたいなものが国全体に出来上がっていたんだ。
そしてそれをとても大切にした。

その代表が、あて名と日付けの書き始めの位置の関係だ。
あて名を日付より高いところから書くのが相手に敬意(けいい)を払(はら)うというもの、低く書いているのが身分が下の者にあてたものだ。
中には、小さな地方豪族(ごうぞく)宛(あて)でも味方になってほしい場合は、あて名を高く上げて書いているものもあるんだ。

たとえば、昨日まで自分より下の身分だった者が翌日から自分より上になるとまったく立場が逆転(ぎゃくてん)するよ。
時には目上の人のいうことには逆(さか)らえなかったり、意見を言うこともできなかったり、正しいことでも間違(まちが)ってるとい言われたら従(したが)うしかない。
あれ?
なんだか今も同じようなことから事件(じけん)が起きたりしてる感じだな。。。